コロナの影響で儲かった?建築業界の噂と実際の影響の話。

DATE:2021/08/18
LAST UPDATE:2021/11/15


こんにちは!
株式会社ENISHIのコラム担当、西です。

弊社のある大阪でも、また緊急事態宣言が決定しました。
どの建築現場でも何十人、何百人もの規模が集まるためちらほらとそう言った話も身近で聞くことも増えたのではないでしょうか。
このコロナ禍で飲食店やアパレル業界が老舗なども姿を消す事態となり、ショックも大きかったですね。
そんな中でも一般的には建築業界は【オリンピック需要により】、ITは【巣ごもり需要により】コロナの影響を受けないどころか好調と言われてきました。

実際に、コロナ禍でも多くの現場は稼働していたため、あまり影響は感じませんでした。

職人同士での話では大した影響がなかった、仕事が増えたといった声も多くありましたが実際はどうだったのでしょうか。
今回はすこし、数字も交えてコロナの影響と今後の建築業界の動向についてお話ていきましょう!

好調とも言えなかった?コロナは建築業界にどのように影響していた?


東京商工リサーチ調べによりますと、主要上場ゼネコン54社の2021年3月期の売上高合計は、11兆8214億円と12兆円を割り込み、4年ぶりに前期を下回ったそうです。
引用:東京商工リサーチ
これは、コロナの影響によって資材価格が高騰したり、もともと建築業界にとっては大きな問題となっていた人員不足を補うための労務費負担が原因だそうです。

ただし、これだけをみれば当たり前といえば当たり前。

オリンピック需要で建築ラッシュだったビルやホテルはすでにほとんどが完成しています。

時期から考えてもその売上高が多く含まれているのは前期までだったはずなので、前期を下回るのは想定の範囲かとおもいます。

そもそも、建築業界に”コロナ禍需要”は本当にあったのか?

このコロナ禍の一番初め、まだ一度目の緊急事態宣言が出て、経営が苦しくなる飲食店などが出てきたころに特影響が少なかった建築業界ではこんな話題がよくあがりました。
「建物は絶対に必要になるのだから建築業界がコロナの影響を受けることはない。来年くらいにはインバウンドも戻ってきて、新規出店とオリンピック後の観光需要で忙しくなる」

私も当時、確かにそうだと思いました。
親しんできたお店が潰れてしまったのは個人的にはもちろん辛いのですが、実際問題、そう言った場合に新しい店舗などに建て替えるのは私たち、建築業界の仕事。
順当に考えれば、需要が増えることがあっても減ることはありません。

実際に一般の方も多くがそう思っていたからこそ、「建築業界はコロナ需要があった」といった誤解や偏見も多かったのだと思います。

ですが、これは皆さんが当時の私が思っていたように「コロナが半年や一年で収まった場合」の話でした。

長引くコロナの影響で、建築業界も思わぬ方向に転がりだしました。

大手企業を中心にリモートワークが進み、オフィスの必要性が見直された。

大手を中心に、多くのオフィスではリモートワークが進みました。
あまりIT化やICT化が進んでいない日本では、バタバタと企業がシステム整備の対応に追われ、トラブルも散見された印象でした。

正直、私も日本ではうまく定着しないと踏んでいました。

しかし、実際にはコストの削減や、過労傾向にある日本の社員にとってワークライフバランスへのいい影響が結果がでた企業も多くありました。

また、国からの補助を見込んで継続するために努力する企業が増えてきています。
ここで問題となったのが空洞化したオフィスです。

月に何度かのオフライン会議のために、月に何百万もする都会のオフィスを契約しておく必要もありません。

また、都会では駐車場の確保なども難しいため、必然的に電車通勤となりますが、毎日満員電車で感染リスクを冒してまで都心に出勤させるのか…といった見直しもされました。

それにより、事務所を大阪や東京の中心地から撤退し土地代の安く通勤リスクの少ない地方へと移す会社まで出てきました。
そうなると、都会に職場がある人にとって魅力的だった中心地の高層マンションの需要も伸び悩みます。

これによって、都会の高層ビルや建築の新規構想が不透明な状況となってしまいました。

生活様式が変わり、多くの企業が出店や改装などを見直しだした。

二度目の緊急事態宣言に入って、終息の目途が立たず恐らくまだまだ続くこの生活に対し、多くの業界は「終息後も完全に元通りにはならない」と見込んで大幅に予算の見直しを行いました。

例年であれば百貨店やショッピングモールは定期的な改装や、イベントごとの仮設ショップを作ったりします。
皆さんも、クリスマスやバレンタインに催事会場に期間限定で立派なコラボショップなどができているのを見たことがあるのではないでしょうか。

しかし、コロナの影響が長引いたことで、こういった内装工事が予算の見直しなどで見送りになりイベントが無くなり、内装工事業者さんの仕事が大幅に減ってしまいました。

このタイミングから、身の回りでも小さな下請け業者さんの経営不振を耳にするようになりました。

このように、実際は複雑な要因がからんで、建築業界もコロナの影響をうけており、ジワジワと「コロナ関連倒産」も増えました。

建築の需要は”無くなる”のではなく”変わる”?

不透明な状況の中でも、建築業界では別の需要が増えるのではないかといった見通しもあります。
それは、巣ごもり需要などで業績を伸ばしているEC関連事業などによる物流センターや倉庫の需要です。

経済産業省の発表によりますと、物販系分野のBtoC-EC市場規模は、前年比21.71%増の12兆2333億円で好調。

これに伴い物流センターや倉庫も増えることが見込まれています。

また、年々高まる災害危機に備えた防災工事の需要です。

ウィズコロナを生き残るために、業界で必要とされる能力とは。

これは、建築業界にかかわらず言われてきたことなのですが、現代では「一つの事業」に絞った経営は意外とリスクが高くなっています。
例えば、アパレル業界でも一つの会社が「価格帯が高いミドル層向け」と「安価な若者層向け」の二つのブランドを持っていたり、アパレルで培ったノウハウを武器に若者向けの飲食店を出店したり…といったように、二足のわらじを履く企業が増えてきました。

それまでは二足のわらじは「収益拡大のため」の手段であることが多かったのですが、リーマンショック以降は収入が一か所や一つの層からだと「共倒れ」になるため、それを防ぐために収入を得る場所を分ける手段としても注目されるようになりました。

今回のコロナの影響はリーマンショック以上と言われています。

建築業界ではどうしても専門技術が必要となるため一種類の職種に限定されやすくなります。
電気屋さんがが大工さんの仕事を、大工さんが水道屋さんの仕事を…というわけにはいきません。
しかし、現状は多くの会社に得意分野があり、少人数で回していることが多いため、それぞれの分野でもさらに細分化された一部の仕事に従事していることも少なくありません。

例えば私たち電気屋では、エアコンの取り付けや小規模リフォームをメインに専門にする会社もあれば、私たちのようにビルの幹線引きなどを専門にしている会社もあります。

ただし、これは先に話していたように「収入を得る場所が一つに集中している」状況です。

今後は建築業界でもいろいろな分野での仕事まで手広く行っていくことが必要となってくるかもしれませんね。

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ENISHI|電気工事業|大阪・松原市

著者:株式会社ENISHI